|ゲルマラジオに遭遇す|目覚め|タンパを知る|アマチュア無線を知る|
|初めての送信機|
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小学校6年生に進級した頃には0-V-1の達人になったと本人は思っていたが、不満も出てきた。感度と選択度が悪いのである。色々と雑誌を読み漁っていると高周波増幅部を設けて1-V-1とするか、スーパーヘテロダイン方式にすれば良いと書いてあるが良く判らない。スーパーヘテロダイン方式は叔母のラジオがそうで、メーカーがやってる方式だから高級そうで良いはずだと勝手に解釈した小僧、早速兄貴に相談に行くもなかなか会えない。
暇な小学生と自営の経営者は趣味のために裂ける時間が違うが、そんなことは小僧の頭には浮かびもしない。何度尋ねていっても兄貴は不在ばかりで会ってくれないのは兄貴が僕を嫌っているからだと勘違いする始末。ちょっとしたストーカーである。
とは言え、不満は募るばかりなので、叔母にもう一度5球スーパーを貸してくれと頼むことにした。以前に借りたときは短波受信のことは知らなかったので、そのラジオで短波を聞いていなかったが短波が受信出来るラジオなのである。正座してお願いしてみる。
「お前に貸したら壊してしもうたろ。修理に出したんやぞ」まだお怒りのご様子。そこで小僧。「僕は叔母さんがもっと良く聞けるようなアンテナを作りました。そのアンテナでどれ位叔母さんが良く聞けるか試験したいんです。」よく言うよ。だが、この言葉に叔母が食いついた。「ふ〜ん、それやったら、うまいこと行ったらそのアンテナとやらを私にも作ってくれるんかい」「もちろんです!」 こうして5球スーパーは小僧の手に落ちた。
借りた5球スーパーは感度も選択度も素晴らしかったが、スプレッドダイヤルが付いていない。メーカー製で普通の放送受信が目的であるから当然であるが、それが気に食わない。0-V-1でもアマチュア無線は聞けたしスプレッドダイヤルが付いていたのでちゃんと聞き分けられる。一方、せっかくのスーパーヘテロダインなのにアマチュア無線を聞こうとするには微妙な調節が出来ない。
それにしてもアマチュア無線と言うのは明らかに普通の放送ではない。アナウンサーのように綺麗な言葉ではないし、「シーキューシーキュー」とか「ファイブナイン」など訳の分からないことを言ったり、「こちらのお天気は晴れです、曇りです」などとも言っている。一体、誰がこんな放送をしているんだろうと不思議な気持ちでいっぱいになり、学校の宿題もそっちのけで聞き入ってしまった事が小僧の人生にいかなる影響をもたらすかを本人は全く知らないのであった。
叔母のラジオには前科があるからカイゾウどころかブンカイさえ憚れる。しかし、既に無線病にたっぷり冒されている小僧の脳みそにその思慮分別をする思考は残っていなかったから、後で元通りに出来るように筐体には一切手は加えず、スプレッド用の豆コンだけをくっ付けて、シャーシーむき出しのまま受信することにした。これ位の知識は既に習得済みだったので、決意さえすれば後は簡単だった。
まんまとカイゾウに成功し、アマチュア無線なるものを聞き入る毎日が始まった。ある日、いつものように7Mc(当時のまま表記:Mc=MHz)を聞いていると突然大音響で交信が聞こえてきた。(この頃には放送ではなく交信という言葉も覚えていた)しかも、JA10××とお互い言っている。今迄一度も聞いたことが無いコールサインである。ひたすら聞いているとどうやら二人とも同じ町の人らしい。凄いぞ!どこの人だろう・・。すぐに会いたくなったが会う方法が判らない。
数日後、やっと会えた兄貴に得意満面でこのことを報告したら「アンカバーだな。そいつは○○町の○○君と○○町の○○君だ」あっさり回答。しかも○○町の○○君なら僕の親戚じゃないか!聞けば、兄貴はアマチュア無線の免許を持っていて正規のアマチュア局だが、アンカバーって言うのは免許を取らずに交信する人のことらしい。そんなことをしてもいいんだ・・と勝手に解釈した小僧、親戚のM君を尋ねていった。彼は2つ年上の中学2年生だったと思う。